気管支肺異形成BPD(もしくは新生児慢性肺疾患)とは、呼吸窮迫症候群などの呼吸障害のために人工換気療法をうけた早産児の一群に認められる、慢性的な肺の病変である。2001年に国際的に提唱された定義では、「在胎32週未満の早産児では、修正36週または退院前までに21%を越える酸素療法を28日以上必要とした児」とあり、その酸素依存度により重症度分類がされている。BPDは退院後も在宅酸素療法を必要とする場合もあり、医療経済を考慮する上でも重要な疾患である。BPDの病因は多因子であり、酸素投与による酸化ストレス、圧損傷、容量損傷、炎症メディエーターによる生物学的損傷などが考えられているが、肺局所での解析やその経時的な変動については解明されていない。 そこで我々はBPDの臨床像の把握や疾患予後の予見に役立てるために、胸部CT 所見を集積して画像所見の重症度を評価するスコアシステムを開発した。また、気管洗浄液中細胞でTGF-・1、IL-10、およびIFN-・の遺伝子発現が高い児は、BPD罹患が多いことを見出した。さらに、出生時より経時的に血液検査所見を追跡し、慢性期の白血球数(とりわけ好中球数)が高い児ほどBPD罹患が多い傾向を認めた。出生時より続く慢性的な炎症がBPDの発症に関連があることが予測されたが、同時に採取した血清のサイトカイン・ケモカインを網羅的に定量した解析では有意な関連は見いだされなかった。今後も症例の集積を進めると同時に、新たに酸化ストレスマーカー、血球遊走因子、血管内皮障害因子との関連についても解析を行う予定である。
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