未熟児の死亡率を左右する合併症の一つである動脈管開存症(PDA)に対する唯一の薬物治療は血管収縮を目的としたPGE合成阻害剤であるが重篤な副作用が多く、不応性のこともある。動脈管では胎生後期に血管内膜肥厚形成が認められ内腔の狭小化が生じるが、未熟児動脈管では内膜肥厚の欠如により内側の接着が不十分なため恒久的な閉塞に到らず再び開いてしまう。内膜肥厚にはヒアルロン酸などの細胞外基質の増加が重要であり動脈管でのヒアルロン酸による内膜肥厚の促進が新たなPDA治療法となりうるかどうかを検討することを目的として実験を行った。 血管平滑筋特異的ヒアルロン酸合成酵素過剰発現マウスの動脈管形態に及ぼす影響を調べるため血管平滑筋にヒアルロン酸合成酵素2型アイソフォーム(HAS2)を過大発現させたトランスジェニックマウスを作成する必要がある。そのため19年度はトランスジェニックコンストラクトの作成に取り掛かった。 またマウスHAS2プロモーターのクローニングと各種薬剤のプロモーター活性に及ぼす影響をしらべるため遺伝子データベースより得た塩基情報を基にして、マウスHAS2プロモーター領域のクローニングをった。クローニングされたHAS2プロモーター領域を、段階的に短くしたり、特異的転写因子と結合すると考えられるcis部位を部分的に除いたコンストラクトを数種類作成し、ルシフェラーゼレポーター遺伝子をその下流に組み込んだ。今後プロモーター活性を測定し、マウスHAS2プロモーター活性を維持するための必要領域を決定するとともに活性の調節に重要と考えられるcis部位とその部位に関連する転写因子を推定する。さらに各種薬剤のプロモーター活性に及ぼす影響を検討する。
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