研究概要 |
未熟児医療の中で動脈管のコントロールは重要な位置をしめる。胎児期においてはプロスタグランジン(PG)が動脈管に対して重要な作用を及ぼしている。すなわち、ビアルロン酸の産生を促進する事で動脈管内膜の肥厚を誘導し出生後の閉鎖に向けて準備をしつつ,閉鎖を阻止するために動脈管を広げているのである。現在、動脈管に対し使用されている薬剤はこのPGを標的にしているが、副作用が大きな問題となる。PGEが動脈管に作用する機序としては、受容体を介してアデニールシクラーゼ(AC)が活性化され細胞内cAMPが増加する事が関与していると考えられている。そこで9つあるACのアイソフォームにつき動脈管に特異的に作用するものを特定し、そのACアイソフォームが動脈管の収縮、内膜肥厚におよぼす作用につき検討し、ACを標的とする薬剤開発を目的とした.胎生21日ラット動脈管平滑筋培養細胞(DASMC)を用いて行ったPCRでは大動脈に比して動脈管にAC2、5、6が高発現していた。胎生19、21、出生直後で検討したところAC2、5は胎生21で最高となり,AC6は成熟過程を追うに従って発現が高くなっていた。またAC2刺激薬、AC5/6刺激薬を用いcAMPの産生を調べ、ともにPGE1刺激と同等のcAMP産生が認められた。一方、内膜肥厚に重要な役割を果たすビアルロン酸産生能に付き検討したところ、AC5/6刺激薬では動脈管平滑筋細胞でビアルロン酸産生が促進されたが、AC2刺激薬では促進されなかった以上よりAC5/6刺激薬にはPGEの作用と同様に血管拡張作用とビアルロン酸産生の作用があるが,AC2刺激薬にはヒアルロン酸を産生刺激作用はなく血管拡張作用だけを持っ事が示唆された。
|