早産新生児の酸化ストレスの程度が、在胎週数の低下に応じて強くなるのか、ある週数を境に酸化ストレスの程度が軽くなるのか、さらにはたとえ満期成熟新生児でも酸素投与などの酸化ストレスに対しては早産新生児と同様に脆弱であるのか、こうしたfundamentalな疑問に答えるべく、臍帯血、生後約3-5日、および約7-10日の3点での血漿検体を利用して、脂質過酸化生成物として、リノール酸より生じるヒドロキシリノール酸(HODE)と、アラキドン酸より生じるイソプロスタン(8-iso-PGF2α)を、またアミノ酸酸化生成物として、フェニルアラニンがhydroxyl radicalの攻撃を受けた際に生じる安定生成物ortho-Tyrosineおよびmeta-Tyrosine、およびtyrosine自身の酸化生成物dityrosineをGC-MS法によって測定した。最終的な結果は、詳細な統計解析終了後に公表予定であるが、現時点での暫定的な結論は次の如くである。すなわち、出生後2週間までの短期間に限れば、酸化ストレスの程度は、(1)吸入酸素分圧とは直接関連しないが、積算酸素投与量と有意に相関する、(2)在胎週数とは逆相関の関係にある。さらに大きな成果は、現在最も信頼のおける酸化ストレスマーカーの一つであるdityrosineが、特に在胎28週未満の超早産児において、日令と共に急激に上昇し、在胎32週以上の新生児と比較して、dityrosine/tyrosine比が、10〜50倍に及ぶことが判明したことである。最終的に、酸化ストレスと関連あるほかの因子-胎内感染、感染兆候、呼吸器設定、栄養状態など-を含めて多変量解析を行い、酸素が有意な因子として残るかどうかを確認する予定である。
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