本研究では研究代表者らが作成した、non-Herlitz接合部型表皮水庖症モデルマウスに正常ヒトXVII型コラーゲン遺伝子を導入したマウスを用いて遺伝子導入治療の客観的評価を行う。平成19年度研究計画に基づき、臨床効果から完全寛解群・不完全寛解群・non-Herlitz接合部型表皮水庖症発症群の3群に分類し、正常マウスを加えて4群の超微構造学的検索による発現タンパク機能の解析を実施した。透過電子顕微鏡を用いてヘミデスモゾーム構造の数・長さ・面積を計測し、臨床効果に伴ってヘミデスモゾーム構造に違いがあったが、完全寛解群においても正常マウスのヘミデスモゾーム構造との違いがあることも明らかになった。また、共焦点レーザー顕微鏡により抗ヒトXVII型コラーゲン抗体を用いて免疫組織科学的検索を施行し、蛍光強度による定量を行った。超微構造学的検索結果と同様に、臨床効果に伴い蛍光強度に違いがあることを明らかにした。さらに同じ抗体を用いた免疫電子顕微鏡法による金コロイド定量法を施行したが、金コロイド数による定量では統計学的に優位な差を見いだすことができなかった。これは定量可能な抗原性を保持した試料の作成に安定性を欠いたためと考えられ、引き続いて試料作成法を検討する必要がある。以上の結果は、遺伝子導入マウスの臨床効果と発現タンパク機能がほぼ合致するものと考えられたが、完全寛解の中でも差があり、特に正常マウスとの違いは、完全寛解と発現タンパク機能の完全復元が一致しないことを示唆している。すなわち平成20年度で遺伝子導入状態と発現タンパク機能の関係を検討することにより完全寛解を得るための遺伝子導入状態が明らかとなり、遺伝子導入治療の客観的評価を可能とすることが期待できる。
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