平成20年度は、平成19年度に得られた超微細構造・免疫組織学的変化について分子生物学的解析を行って遺伝子導入状態と蛋白発現・蛋白機能の回復についての研究を行った。 平成19年度に明らかとなった結果に従って、臨床症状・蛋白発現・超微構造変化によって以下に分類した。(1)完全寛解・蛋白発現正常・完全構造、(2)完全寛解・蛋白発現正常・不完全構造、(3)完全寛解・低蛋白発現・不完全構造、(4)不完全寛解・低蛋白発現・不完全構造、(5)XVII型コラーゲンKO、(6)wild type 以上の6つに関して、それぞれ分子生物学的解析を行った。結果、(1)に関しては遺伝子発現も(6)と同様であり臨床・蛋白・構造・遺伝子が完全に回復したと確認した。(2)(3)(4)に関しては11RNA発現強度は(2)>(3)>(4)の順と考えられたが、結果は異なりそれぞれに有意差を見いだせなかった。続いて遺伝子導入状態の比較をin-situ hybridizationを用いたFISH法により解析を試みた。マウスの染色体はヒト染色体と異なり、形状が類似しているので比較が難しく、複雑な手技も伴って信頼性の高い結果は得られなかった。しかし、遺伝子導入状態は個数・部位ともに個体によって異なり遺伝子導入状態が不安定であることが推測された。これは我々が構築したCOL 17 rescue miceのバッククロスが不十分であり、遺伝子導入状態の不安定さが不完全寛解群を生じるものと思われた。これは極めて重要であり、遺伝子導入治療効果は我々が実施してきた検索を行い、FISH法にて遺伝子導入状態を明らかにすることで客観的評価を可能とし、構造や蛋白発現およびgenome DNAの確認だけでは不十分であると結論できる。
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