本研究の目的は、水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症(bullous congenital ichthyosiform erythroderma : BCIE)をモデルとして、RNAiによる遺伝性皮膚疾患の遺伝子治療を行うことである。Antisense oligonucleotideを用いた従来の遺伝子発現抑制とは異なり、RNAiではごく少量のsiRNAの導入によって、大量の目的遺伝子の抑制が可能であることから、効果的な目的遺伝子の発現抑制が予想される。本研究課題において、1)ケラチン10遺伝子を特異的にノックダウンするsiRNAを設計し、培養表皮細胞に導入し、realtime PCRによりmRNAレベルでの発現抑制を確認する。2)導入にもっとも効果的な試薬の選定とその至適濃度などトランスフェクション条件についても検討し、表皮細胞におけるRNAi法の確立を行う。3)BCIE患者におけるケラチン10の異常部位を認識するようにsiRNAを設計し、上記で用いた方法を用いて、患者皮膚から三次元培養した表皮および患者皮膚を移植したヌードラットへ導入し、形態学的に病変の改善を認めることを確認する。 以上の計画に基づき研究を行い、目的遺伝子の培養細胞における発現抑制をrealtime PCRにより確認した。培養細胞系におけるケラチン10遺伝子発現抑制が可能であったが、BICE患者においてその特定変異部位に対して特異的に働くsiRNAを生成したが、患者皮膚においては効果的な発現抑制には至らず、今後の更なる研究が必要と考えた。
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