角化異常症の病態を解明するために平成19年度に行った主な研究成果は次のようにまとめられる。 1. 炎症性角化異常症の代表的疾患である乾癬の原因遺伝子の候補であるコルネオデスモシンをノックアウトしたマウスにおいて角層接着の障害、毛髪異常が生じることを明らかにした。これにより乾癬の病態に関する示唆を与えると共にコルネオデスモシンが表皮や毛の発達に不可欠な分子であることを明らかにした。 2. 魚鱗癬を生じる先天性疾患であるARC症候群は細胞内の小胞輸送を調節する分子であるVPS33Bの遺伝子異常によるが、本症患者の表皮では層板顆粒の輸送が障害されていることを明らかにした。魚鱗癬が層板顆粒輸送異常によって生じる例として稀ではあるが重要な疾患であることがわかった。 3. リシパ球の成熟に関与することが知られている転写抑制因子であるBlimp-1を表皮特異的に欠損させたところ、顆粒層から角層への分化が遅延することが示され、本転写因子の角化への関与が始めて示唆された。 4. 2で述べたように魚鱗癬の異常となる層板顆粒の輸送機構を明らかにする目的で、小胞輸送を調節するRab11分子と層板顆粒の局在を比較したところ、Rab11がTGNから層板顆粒にかけて存在し、細胞内での顆粒の輸送に関与していることが示唆された。 5. 魚鱗癬と乏毛症を生じる劣性遺伝疾患がマトリプターゼの遺伝子異常によることを明らかにした。本酵素の表皮分化や毛の発達における役割がはじめて示された。
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