(1)正常皮膚では角層は組織標本で網の目状を呈するが、角化異常症においてはこれが形態的に異常となる。しかし正常角化で網の目状となる理由はこれまで不明であった。我々はこれが角層細胞間の接着構造の部位選択的な分解機構によると考え、細胞の辺縁においてはタイトジャンクションによって接着構造分解酵素の働きがさまたげられているためであることを示唆する研究結果を報告した。これは従来顆粒層にしか認められていなかったタイトジャンクションが角層に存在し、しかもバリア機能をもつことを証明することによりなしえた。(2)3次元培養皮膚を用いて、タイトジャンクションを障害するsodium caprate処理により層板顆粒の分泌が低下することを報告した。このことから正常角化に必要な層板顆粒が正しく分泌されるためにはタイトジャンクションが重要な働きをしていると考えた。(3)角化症の分類に関するコンセンサス会議に参加し、その成果をこれまで国際的に認められた分類のなかった角化症の国際分類として発表し、いくつかの病型についてはより病態を反映した新名称を提唱した。(4)CEDNIK症候群はSNAP29の変異による神経症状に魚鱗癬をともなう疾患であるが、本症の世界で2番目の家系を報告した。本症のin vitroモデルとして3次元培養皮膚でSNAP29発現を低下させることで層板顆粒分子の分泌異常と角層肥厚を再現できることを報告した。(5)これまで全く原因が不明であったcomedonal Darier diseaseの原因が小胞体に局在するカルシウムポンプの遺伝子ATP2A2であることを報告した。
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