研究概要 |
進行期がん患者に対する有効な治療法が確立されていないことは社会的に大きな問題である。がん患者における制御性T細胞の頻度や,そのリクルートメントに関わる分子を調べることによって,制御性T細胞をコントロールすることが可能になれば,今後の免疫療法の開発/改良にとって大変意義深く,また,制御性T細胞が誘導されやすい腫瘍抗原を網羅的に調べることは,抗原特異的な免疫療法に直接役立つ重要な情報となりえると考えられるため、以下の事柄について明らかにすることを目的として、本研究に着手した。 (1)腫瘍浸潤リンパ球の中に含まれる腫瘍抗原特異的リンパ球の存在と,制御性T細胞の存在と機能。腫瘍抗原特異的リンパ球の抗腫瘍能を抑制する。(2)これまでに同定されている腫瘍抗原で末梢血リンパ球を刺激し,誘導されるリンパ球のサブセット。(3)制御性T細胞がCCR4とCCL22の相関によって,腫瘍局所にリクルートされる。 その結果、メラノーマの原発巣、転移巣ともに、制御性T細胞が認められ、なかでも微小転移巣に比べて、肉眼的転移巣においては、foxP3のmRNAレベルが高かったことから、腫瘍量の増大に相関して、制御性T細胞が誘導されていることが示唆された。また、腫瘍細胞がCCL22を産生していることから、CCL22と制御性T細胞のCCR4発現のinteractionが、腫瘍局所におけるTreg誘導のメカニズムと考えられた。いっぽう、in vitro抗原ペプチド刺激により、TGFβの産生が認めら、未熟DCで刺激した場合に増強した。患者に比べて、健常人ではTGFβの産生はほとんど認められなかったことから、メラノーマ患者では、免疫抑制的サイトカインの産生が起こりやすい病態が示唆された。以上の結果から、抗原特異的免疫療法においては、刺激にもちいる樹状細胞の成熟度やペプチドの選択を慎重に行うことの重要性が明らかとなった。
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