研究概要 |
抗腫瘍免疫応答は抑制性の免疫応答によって抑えられる。抑制性の機能を担う細胞としては制御性T細胞(Treg)やNKT細胞やγδT細胞の亜集団が知られており、それら免疫抑制性リンパ球優位細胞表面タンパク質をサブトラクション法やポリクローン抗体作製法により詳細に調べた結果、メラノーマ傷害性の免疫応答を抑制するTreg表面タンパク質の多くが、生体の高次機能制御において極めて重要なGタンパク質共役型受容体(GPCR)であることが判明した。そのため、この受容体の発現パターンの解析と分子機能を詳細に解析することは、メラノーマ免疫応答の制御機構の全体像を知る上で極めて重要な上、新しいがんの治療薬及び診断薬開発に大きな一助となる可能性があるためさらなる検討を行った。GPR91, P2Y13, α1c-adorenoceptor (ado), α1d-ado, Edg2, P2Y1, α1b-ado, Edg6や未知7分子を含む15種類のGPCRは、CD25陽性のCD4細胞を用いたフローサイト分析において細胞内foxp3陽性のTreg上に優位に発現しており、発現量は既にTregへの発現が知られているEdg1やCXCR4と同等程度であった。それら分子陽性の細胞除去末梢血リンパ球のMLRでは、どの分子においてもその陽性細胞除去画分は強い増殖能とサイトカイン産生能を示した。さらにMLRでのそれらGPCR分子特異的抗体添加では、3種類の分子で増殖能に変化は見られなかったが、程度の差はあれ5分子において増殖能の亢進、7分子において増殖能の低下が観察された。この後行っている各GPCR特異的な単クローン抗体取得については、GPCR分子の複雑な構造から構想通りの作製に至っていないが、Treg活性をコントロールしうるGPCR分子が同定できたことは、今後の有効なメラノーマ免疫治療の開発へ大きな示唆を提供するものだと考えている。
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