デルマトポンチン固相化ビーズを用いたHaCaT細胞の抽出液の共沈法ではシンデカンは検出されず、分子量約67kDaの分子種が得られた。これは67kDaラミニンレセプター抗体と反応することから、67kDaラミニンレセプターと同定された。この抗体を加えることにより、HaCaT細胞のデルマトポンチンへの接着が有意に抑制され、デルマトポンチンのレセプターが67kDaラミニンレセプターであることが裏付けられた。デルマトポンチンの細胞接着ドメインであるDP-4ペプチド固相化ビーズでも67kDaラミニンレセプターが共沈した。デルマトポンチンが強力な表皮細胞接着能を持つこと、その細胞接着ドメインがDP-4ペプチドで、レセプターがインテグリンと67kDaラミニンレセプターの2種類であることを論旨として、論文を投稿中である。 デルマトポンチンの細胞接着ドメインであるDP-4ペプチドをマウス背部の実験的創傷に塗布すると、リン酸緩衝生理食塩水のみを塗布した対照の創に比べて有意に創傷の治癒が促進された。その効果は既存の創傷治癒促進剤であるトラフェルミンと比較しても同等以上であった。DP-4ペプチドを将来的な創傷治癒促進剤として応用することを目的としてこの成果に関して産業財産権の出願を行った。 in situ hybridizationによるデルマトポンチンの創傷における発現の検討では、肉芽を取り囲むように浅筋膜から延長した結合組織に発現が認められた。免疫組織化学で認められた表皮での陽性反応とは異なる発現パターンであった。in situ hybridizationの所見が正しいと考えているが、経時的な観察が必要である。 デルマトポンチンとコラーゲンの相互作用がEDTAで阻害されることが判明した。このことはデルマトポンチンが2価陽イオンの結合蛋白質である可能性を示し、細胞外マトリックスにおいて特定のイオンのリザーバーとして機能することが想起される。
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