1.重症薬疹である薬剤性過敏症症候群(DIHS)とStevens-Johnson症候群(SJS)/中毒性表皮壊死症(TEN)の発症初期の末梢血中の制御性T細胞(Treg)の量と機能を解析した。 2.DIHSの急性期にはTregは顕著に増加しており、T細胞の増殖やサイトカイン産生を抑制する機能や、皮膚への遊走に必要な接着分子の発現は健常人と同様に保持されていた。一方、SJS/TENではTregの量は健常人のそれと比較して有意な差はなかったが、Tregの機能が著明に低下していた。 3.DIHSの発症初期では機能的に正常な機能を有するTregが増加することが、B細胞の減少やNK細胞の減少をもたらし、潜伏しているヘルペスウイルスの再活性化の一因になっている可能性がある。 4.SJS/TENの発症初期のTregの機能的な低化は薬剤特異的エフェクターT細胞の過度の活性化をまねき、表皮の壊死性の変化をもたらしている可能性がある。 5.DIHSとSJS/TENの回復後のTregの量、機能の解析結果ではDIHSにおいて初期に増加していたTregは回復後には量的に正常に復していたが、機能傷害が生じていた。一方、SJS/TENでは発症初期に低化していたTregの機能は臨床症状の回復期には正常の機能に復していた。 6.このようなDIHSの回復後のTregの機能傷害は後遺症として認められる自己免疫疾患の発現に関与している可能性がある。 7.重症薬疹におけるTregの解析結果はDIHS、 SJS/TENの発症機序の解明に貢献するとともに、適切な治療の選択に繋がり、臨床的にも有用な結果もたらすと考えられる。
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