本研究は、DNAチップやSAGE法などの網羅的遺伝子発現解析により、我々が同定したヒト悪性黒色腫で選択的或いは高発現する新規分子のうちKU-MEL-4、KU-MEL-5、KU-MEL-6、及びKU-MEL-7について、癌細胞悪性形質への関与や免疫学的意義を明らかにし臨床応用の可能性を検討した。前年度は、各候補遺伝子ともヒト正常組織及び細胞株で発現は低く、ヒト悪性黒色腫組織及び細胞株で高頻度或いは選択的な高発現が確認された。本年度は、各候補遺伝子の悪性黒色腫細胞での機能解析を行うため、RNAiを用いた発現抑制による機能阻害や遺伝子導入による強制発現実験を行い、悪性黒色腫の形成や転移などに関わる基本的形質について検討した。KU-MEL-4ファミリー分子及びその受容体分子は、ヒト悪性黒色腫組織及び細胞株で選択的な高発現を認め、KU-MEL-4はパラクラインだけでなくオートクラインにも機能する可能性があり、3種のヒト悪性黒色腫培養細胞へのsiRNA導入でKU-MEL-4発現抑制により細胞増殖抑制が認められ、1株ではIL-10産生抑制も認めた。KU-MEL-4合成ペプチドの添加では細胞増殖に影響しないが、KU-MEL-4受容体分子阻害剤添加により増殖抑制を認めたことから、治療標的と成りうる可能性がある。KU-MEL-5の発現は特に転移性悪性黒色腫で高く、siRNAで抑制すると細胞増殖能及び接着能が低下し、強制発現によりいずれもが亢進したことから、転移性悪性黒色腫の診断に応用できる可能性がある。KU-MEL-6蛋白に対するIgG抗体が悪性黒色腫患者血清中に認めて治療標的となる可能性があり、またKU-MEL-7分子に対するポリクローナル抗体を作成し、診断に応用できる可能性がある。従って各候補遺伝子とも悪性黒色腫の悪性形質に関与しており、診断マーカーや治療にも応用できる可能性が示唆された。
|