研究概要 |
IL-31過剰発現マウスにおいて,脱毛,激しい掻痒行動および血清IgEレベルの上昇が認められた.リコンビナントIL-31(rIL-31)の投与により,これらの所見が再現されるか調べるために, rIL-31を哺乳細胞に産生させ精製する方法を確立した. rIL-31の投与によりこれらの所見が再現されることが判明した. rIL-31の背部皮内投与による脱毛は,投与数日後に腹部からはじまり,投与2週間後には背部に渡って広範囲に認められたが,頭部には認められなかった.脱毛部位の組織化学的所見では,毛球部の細胞増殖が認められ,あたかも成長期のようであった.また,毛球部にIL-31レセプターの発現増強が認められた.毛周期が休止期の場合にのみ, rIL-31の投与により脱毛が認められことから, rIL-31投与による脱毛は毛器官形成にかかわるシグナル伝達と関与することが推測された.掻痒に関しては, rIL-31の投与後2〜3時間後から痒み症状が認められることから,何らかの因子の発現を介して痒みが生じると思われた.血清IgEレベルの上昇は, T細胞からのTh2サイトカイン分泌増強によって促進されることが判明した.活性化マクロファージにIL-31レセプターの発現が認められることから, IL-31によって分泌が促進されるプレサイトカインによってTh2サイトカインの分泌増強が促進すると推測された.一方,ヒトにおいては,喘息患者,アトピー性皮膚炎患者において末梢血単核球からのIL-31の分泌亢進が認められた.このIL-31分泌能は, IL-5やIL-13などのTh2サイトカイン分泌能と相関するが, Th1サイトカインであるIFN-γとは相関しなかった.以上のように, IL-31がアトピー性皮膚炎や喘息の病態に深く関与することがモデル動物およびヒトにおいて明らかになった.
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