不安障害の1つで生涯有病率が1.5〜3.0%といわれるパニック障害では、その責任脳部位としての扁桃体の機能異常が示唆されてはいるものの、一方で方法論的制約のため、扁桃体に存在する神経伝達物質を直接in vivoで測定することはできなかった。そこで本研究では、当大学脳研究所に設置済みの超高磁場(3テスラ)MRI装置を用いて、パニック障害患者及び健常被験者を対象として1H-MRS測定を行い、扁桃体における興奮性アミノ酸であるグルタミン酸(Glu)及び抑制性アミノ酸であるγ-アミノ酪酸(GABA)等を調べ、パニック障害患者の扁桃体におけるGlu神経系及びGABA神経系の量的異常を明らかにすることを、研究期間である2年間で試みた。 以前の研究から患者群の病状の違い等から測定値のばらつきが生じる可能性が想定される。そこで本研究では、対象となるパニック障害患者については、DSM-IV-TR診断基準を用いて60分の構造化面接を行い、パニック障害と診断された後、我々の不安障害専門外来で1〜2年の治療期間の後に完全寛解(測定前6ケ月以上PAや広場恐怖がない状態と定義)となり、かつ本研究の主旨を理解し、検査前に書面にてインフォームド・コンセントが得られた者のみとする予定である。したがって、初年度である平成19年度は、1H-MRS測定については正常被験者数名を対象とし、手技的な調整やデータ解析方法の検討などを中心に行った。平成20年度については、さらに正常被験者に加え、パニック障害患者の測定を行う予定である。
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