研究概要 |
<目的> 3テスラMRI装置を用いた1H-MRSにより測定されたグルタミン酸,GABA等の脳代謝物濃度を統合失調症の中間表現型とみなし,これに影響を与える遺伝子の-塩基変異が存在するか,また存在するとするならば,統合失調症と対照正常者に対して異なる影響を与えるのか否かを証明することにある。当初の計画では,初年度に統合失調症と対照正常者を各々24名程度牧集して暫定的結果を得ようと考えたが,より多くの対照正常者データをまず牧集して正常データベースを構築し,あとから年齢と性別等を1対1対応させた統合失調症患者をマッチさせる方法に変更した。遺伝子の-塩基変異の影響度は小さいので,統計的自由度を確保するために,サンプル数を患者群50,対照群50とした。平成19年度は50名の正常者データを収集して終了した。 <対象> 男性43名,女性7名,精神疾患,身体疾患を有しないものに限る。 <MRIデータ> 新潟大学脳研究所統合脳機能研究センターの3テスラMRI装置を利用。 1)1H-MRSによる脳代謝物測定 前部帯状回,後部帯状回,小脳から,安定したN-アセチルアスパラギン酸,コリン含有物,グルタミン酸,GABAの定量値を得ることができた。興味深いことに,前部帯状回ではグルタミン酸>GABA,小脳ではグルタミン酸<GABAであった。この代謝物の局所パターンが,統合失調症では正常と異なっているのではないかと仮説を立てた。 2)高解像度3次元構造MRIと拡散テンソル画像 前者は局所脳体積や皮質白質比の影響を見積もるために,後者は白質線維の分析を行うために使用する。 <遺伝子解析> 上記の50名全員からDNA採血をした。ただしSNPのgenotypingはまだ完了していない。遺伝子解析の担当研究者がブラインドで解析する予定である。
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