研究概要 |
1)統合失調症警告期の客観的診断法の開発を目的として、短時間で施行可能な神経心理検査バッテリーに関する以下の検討を行つた。すなわち、研究者らが開発した認知機能簡易評価尺度(BACS)(Kaneda,Sumiyoshi, et. al.2007)などを用い、初発および前駆期にあると疑われる統合失調症患者の認知機能、精神病症状、QOL,社会機能ならびに事象関連電位のデータを収集中である。 また、前頭葉機能に関連する認知機能を比較的短時間で測定できるToyama Psychopharmacology Study Batteryを新たに開発し、統合失調症患者および健常対照群に施行した。その結果、特に規則変換課題、言語学習記憶、文章記憶などの認知機能領域において、患者群の遂行が不良であることを見出した。 以上の試みは、統合失調症患者の早期発見のための簡便な診断指標の探索に資すると思われる。 2)統合失調症治療において、最近第一選択薬として用いられるようになってきた第二世代抗精神病薬(second generation antipsychotic drugs, SGAs)は、統合失調症患者の認知機能障害をある程度改善することが報告されてきたが、その効果は十分とは言えない。代表研究者らは、セロトニン1A受容体部分作動薬であるbuspironeをSGAにより加療中の統合失調症患者に上乗せ投与を行うことによる認知機能に対する影響を検討した。プラセボを対照とした無作為二重盲検法による検討の結果、buspirone投与群ではプラセボ群と比較して、注意/情報処理機能が有意に改善するという結果が得られた。これらの所見は、統合失調症警告期にある患者への介入に、セロトニン受容体に作用する薬物の投与が有用である可能性を示唆するものと考えられた。「以上の研究成果は専門誌に公表した(Sumiyoshi, et. al.2007)。さらに、セロトニン1A受容体部分作動薬であるtandospironeのperospirone(SGA)への上乗せ投与が、統合失調症患者の言語学習記憶、記憶の組織化、 QOLを改善することを見出した(Sumiyoshi, et. al.2007)。以上の研究結果は、セロトニン1A受容体に作用する薬物が、統合失調症の機能的予後改善に重要な役割を担う可能性を示すものである。
|