研究課題/領域番号 |
19591345
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
住吉 太幹 富山大学, 大学院・医学薬学研究部, 准教授 (80286062)
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研究分担者 |
川崎 康弘 金沢医科大学, 医学部・精神科, 教授 (80242519)
鈴木 道雄 富山大学, 大学院・医学薬学研究部, 教授 (40236013)
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キーワード | 統合失調症 / 認知機能 / 事象関連電位 / 抗精神病薬 / セロトニン / 5-HT_<1A>受容体 / 薬理遺伝学 / 必須多価不飽和脂肪酸 |
研究概要 |
統合失調症警告期の新しい客観的・生物学的診断法の開発を目的として、短時間で施行可能な神経心理検査で測定できる認知機能障害のパターンや事象関連電位(ERP)による脳機能画像所見などを検討した。今年度は特に以下の所見を得た。 1.注意に依存しないERPsであるミスマッチ陰性電位(MMN)の振幅は、統合失調症で減弱する。今回、MMNにより反映される認知機能に対する、セロトニン-5-HT_<1A>受容体作動薬タンドスピロンの効果を検討した。結果として、すでにSGAによる治療を受けている患者へのタンドスピロンの追加投与により、MMNの振幅低下が改善した。さらにこの変化は、BACS-Jにより測定される神経心理学的スコアの改善に先んじて生じた。 2.統合失調症患者におけるSGAsの認知機能改善作用への5-HT_<1A>受容体遺伝子多型の効果を検討した。結果として、-1019C/GのC/C保持者は、C/GあるいはG/G保持者と比較して、有意に大きい注意機能へのSGAに対する治療反応性を示した。以上の所見は、統合失調症の認知機能障害の改善を目指したオーダーメイド医療の開発を促進すると期待される。 3.神経細胞膜を構成するリン脂質中の必須多価不飽和脂肪酸(essential polyunsaturated fatty acids:EPUFA)の異常は、統合失調症の精神病症状ならびに社会認知機能の障害に関与することを、申請者らは過去に見出した。抗精神病薬によるこれらの症状の改善効果が、EPUFA濃度により予測されるか検討を行った。結果として、EPUFA濃度は、陽性症状および社会認知機能の改善の程度と、それぞれ有意な正および負の相関を示した。以上より、赤血球膜中のEPUFA濃度が、抗精神病薬への治療反応性を予測する簡便なマーカーとなりうることが示唆された。 以上の研究成果が、新規の抗精神病薬や認知機能増強薬の開発を促し、精神病の前駆期や発症早期にある患者の長期予後向上に向けた治療法開発の発展に寄与することが期待される。
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