研究課題
平成22年度には富山大学附属病院神経精神科と県の精神保健行政サービスが中心となり行っている「こころのリスク相談事業」の利用者から、新たに4名のARMS症例を対象として加えることができた。上記対象のデータの一部を用いて、初回エピソードの統合失調症患者について、白質の微細構造の変化の指標であるfractional anisotropy(FA)と灰白質体積についての統計学的な解析を行った。初回エピソード統合失調症患者で右内包、左上縦束、右下縦束でFA低下を認め、FAと灰白質体積の相関の検討では、左上縦束のFAと左眼窩前頭皮質の灰白質体積に正の相関を認めた。上縦束は、前頭葉-側頭葉を連絡する主要な神経線維束であり、統合失調症患者でのlanguage pathwayの異常への関連が示唆されており(Li et al.,2009)、初回エピソード統合失調症患者でDTI研究でもFA低下が報告されている(Perez-Iglesias et al.,2010)。統合失調症患者における白質FA低下の一部は、その線維束が連絡する皮質の体積減少と関連することが示唆された。平成23年度はARMS症例、初発統合失調症患者、健常者について、ボクセル単位解析により、灰白質体積について、統計学的な検討を行った。ARMSと初発統合失調症患者の比較では、初発統合失調症患者で左前部帯状回の灰白質の有意な減少を認めたが、ARMSと健常者の比較では、灰白質の有意差を認めなかった。ARMSでは精神病の顕在発症群の前部帯状回の灰白質減少が過去に報告されており、我々の対象者でも既に顕在発症している例ではベースラインでの前部帯状回の灰白質体積が統合失調患者の平均近くに分布していた。今回の検討では、ARMSの例数が少ないことや低年齢であることが影響している可能性があり、それらの影響を排除した検討が今後、望まれる。
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