研究概要 |
パニック障害などの精神疾患における適切な生物学的診断マーカーの開発は急務であり,根本的治療法や治療薬及び予防法開発の重要な手がかりが得られると考えられる。今年度はサンプリングを継続的に行い,本研究において使用できるパニック障害患者のサンプル数(血清,全血)で500以上,健常対照者については約200を収集することができた。ここで,パニック障害患者の初診時の各種血液検査データと臨床症状やパニック障害の重症度,COMT,MAOA多型との関連を検討したところ,特に男性において一部のモノアミン関連酵素と血清コレステロール値との関連を示唆する知見が得られた。また,既に報告のある血清マーカー候補として3-methyl-4-hydroxyphenylglycerol(MHPG),BDNFについての検討を行う準備を進めた。その他,一卵性双生児不一致例において診断マーカー候補の一つとして光トポグラフィーを用いた前頭葉機能の検討を行い,前頭前部についてはTrait marker,前頭葉外側部についてはパニック障害のState markerとなりうる可能性が示された。 研究代表者が以前より行っていた東京大学等との共同研究において500K SNPチップを用いたパニック障害に関するゲノムワイド相関研究においてAPOL3など複数の遺伝子について疾患感受性が認められた。因子について診断マーカーとなりうる可能性のある候補が複数見出されており,次年度はそれらを含めた診断マーカーの可能性を検討する予定である。
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