今年度は甲状腺ホルモン受容体ノックアウトマウス(TRKO)の行動解析と脳内カテコールアミン濃度の解析を試みた。TRKOα、βとダブルノックアウトマウスを作成し、これを比較検討に供した。昨年までの結果と比較した結果、TRKOαはオープンフィールドテストの行動で多動を示した。Homozygotesにその傾向は強く、heterozygotesはコントロールとhomozygotesの中間の傾向を示したことから、受容体の有無が影響していることが示唆された。。多動傾向はTRKOβでより顕著で、αと同様に不安閾値の高さが明らかになった。homozygotesが最も多動で、heterozygoteslはコントロールと中間を示す所見も同様であった。ダブルノックアウトマウスはワイルドタイプよりも寡動を示し、すべての測定項目でTRKOα、βを含めたすべてのTRKOよりも動きが少なく不安も低く、α、β単独ノックアウトマウスと際立った違いを認めた。液体クロマトグラフィーによる脳内各部位におけるカテコールアミン濃度を検討したところ、TRKOβでは線条体と側坐核でドーパミン濃度が上昇しており、対照的にダブルノックアウトでは側坐核におけるドーパミン濃度の低下を認め、TRKOすべてについて、セロトニン濃度が対照群より低下していることが明らかになった。ノックアウトマウスの行動異常について、ドーパミンとセロトニン双方が影響を与えていることが示唆された。
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