研究課題
脳腫瘍などの際に臨床的に用いられている11C-メチオニンポジトロン断層画像(MET)は、神経細胞における蛋白合成(CPS)を評価できる事が知られており、近年、神経線維の遮断により障害のない遠隔部位にも機能低下像が現れる現象である遠隔効果を伴わずに神経細胞障害を評価する事が可能である事がわかった。そこで、8例の軽度〜中等度AD患者に対してMET及び123I-IMP-単一光子放射断層画像(IMP)を施行し、脳血流(CBF)とCPSの障害程度を比較した。対象群(HC)として、年齢、教育歴をほぼ一致させた8名の健常高齢者にIMPを実施した。各画像を、評価者によるbiasを除外するためにNEUROSTATを用いて解剖学的標準化を行った後にテンプレートMRI上に関心領域(ROI)を設定し、被験者間の核種の取り込みの差によるbiasを除外するために後頭葉との比を算出して検討した。ROIは、前頭葉、頭頂葉、内側側頭葉(MTL)、PCC、後頭葉に設定した。IMPでは、HCに対しADではPCCのみCBF低下が認められ、ADでは他の領域に比してPCCとMTLでCBFが低下していた。一方、METではIMPと比較してPCCのCPSはCBFに比して保たれていたが、他の領域と比較するとPCCとMTLではCPSは低下していた。PCCとMTLで認められたCPS低下は神経細胞障害を反映すると考えられ、PCCではCBFほどのCPSの低下が認められなかった事と併せて、神経細胞障害と遠隔効果の二つの要因によってIMPではPCCでのCBF低下が観察されるのではないかと推測された。以上より、METは遠隔効果に影響されずに神経細胞障害を評価可能であり、ADにおける機能低下の主たる原因である神経細胞障害をin vivoで評価可能なバイオマーカーとして有用ではないかと考えられた。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (7件) 図書 (1件)
大阪府内科医会会誌 16
ページ: 191-198
CLINICIAN 54
ページ: 18-21
治療 89
ページ: 2943-2953