1.pericentrin変異マウスの神経系繊毛の観察 pericentrin遺伝子にホモで挿入ベクター配列を持つマウス(ホモ変異マウス)および野生型マウスの脳組織切片を作成し、ソマトスタチン3型受容体抗体およびアデニル酸シクラーゼ3型(ACIII)抗体を用いた免疫蛍光染色により中枢神経系での1次繊毛の形成を比較検討した。大脳皮質、海馬歯状回顆粒細胞層、視床下部、扁桃体、側坐核、嗅球においてホモ変異マウスでは神経細胞1次繊毛の低形成を認めた。嗅粘膜のアセチル化チューブリン抗体およびACIII抗体を用いた免疫蛍光染色では、嗅覚神経細胞の嗅繊毛の低形成をホモ変異マウスで認めた。またNissl染色による観察では大脳皮質の層構造、海馬の細胞構築、および個々の神経細胞の極性、軸索や樹状突起の伸展およびネットワークの形成に関して、ホモ変異マウスと野生型マウスの間で有意な差異を認めなかった。以上により、pericentrin変異マウスは特に神経系繊毛の機能解析に有用であると考えられた。 2.pericentrin変異マウスの行動解析 セロトニンの放出を促進するpara-chloroamphetamine(PCA)およびセロトニンの前駆体5-hydroxytryptophan(5-HTP)の腹腔内投与による自発運動の亢進をactivity monitorを用いて測定した。自発運動の指標としての移動距離は、ベースライン値およびPCA、5-HTPによる亢進について、ホモ変異マウスと野生型マウスの間で有意な差異を認めなかった。絶食後のマウスに隠したfood pelletを探索させる嗅覚機能試験では、pelletの発見に要する時間の有意な増大をホモ変異マウスで認めた。以上により、中枢神経系の1次繊毛の低形成は自発運動には影響を与えないこと、嗅繊毛の低形成が嗅覚機能の低下を惹起したことが示された。
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