うつ病患者には自己の認知に関する認知と情動の相互作用に関する前頭前野と前帯状回の機能障害があり、それが自己に対する否定的な認知を生じさせているという仮説を立てた。この仮説を検証するために、本研究では、1)情動価を持つ言語を用いたSRE課題をうつ病患者に実施し機能的核磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging; fMRI)を用いて測定する、2)構造的な認知行動療法セッションを行い、その前後でのSRE課題遂行中の脳機能の変化をfMRIを用いて測定することにより、自己に関する否定的な認知の神経基盤を検討した。 本年度は、1)についての検討を行い、以下のような結果を得た。自己関連付け課題遂行中に健常者群では内側前頭前野や楔前部の活動が認められ、ネガティブ語の自己関連付けでは、加えて腹側前帯状回の活動が認められた。このことから、ネガティブ語の自己関連付けに内側前頭前野や楔前部、腹側前帯状回を含む脳内ネットワークが関わることが示唆された。また、うつ病患者群では、健常者群と比較してネガティブ語の自己関連付け時に内側前頭前野と腹側前帯状回の活動上昇がみられた。
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