研究概要 |
一般高齢者の認知機能低下を来たす要因を調べることを目的として、平成16年から平成18年(Time A)にかけて伊万里市黒川町の65歳以上の住民400名に対して脳健診を呼びかけたところ240名が参加した。健診の内容は認知機能検査としてMini Mental State Examination(MMSE),Frontal Assessment Battery(FAB),Clock Drawing Test(CDT),Clinical Dementia Rating(CDR)を施行した。脳画像は1.5テスラーのMRIを用い、128名にはVSRADにより海馬の萎縮の程度を調べた。その他、家族、飲酒、喫煙、趣味、社会活動などの生活習慣を調査した。平成19年から平成21年(Time B)にこれらの集団に同様の調査を行い3年後の認知機能の変化と海馬萎縮の進展を検討した。2回目のVSRADで海馬萎縮の変化を検討できた90名についての結果を報告する。MMSEはTime Aで26.7±2.8、Time Bで27.6±2.9で3年後のMMSE得点は高くなっていた。これは練習効果によるものと思われる。EABはTime Aが15.3±1.7、Time Bで14.9±1.0で3年後に低下していた。VSRADの脳萎縮を示す各パラメーターはいずれもTime Bで萎縮の進行が認められた。Time AにおけるMMSE及びFAB得点とTime Aにおける海馬萎縮を示すZ scoreには有意な負の相関が認められた。またTime BではFAB得点と海馬萎縮を示すZ scoreにも有意な負の相関が認められた。しかし、3年間の認知機能の低下と海馬萎縮を示すZ scoreの変化には有意な相関は認められなかった。以上の結果はVSRADによる脳萎縮の変化は3年間の認知機能の変化を反映しないことを示唆している。今後Time Bの不参加者に参加を呼びかける必要がある。
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