研究概要 |
本研究では,抗パーキンソン病薬のL-DOPAを反復投与することによる2種類の転写調節因子蛋白(c-Fos及びZif268)の脳内発現様式の変化を,免疫組織化学法を用いて,ヘミ・パーキンソン病モデルラットを対象に観察する。次に,L-DOPA繰り返し投与後に発現するFos及びZif268が,どのような神経伝達物質あるいは受容体を有する細胞と共存するかを,免疫組織化学法を用いて明らかにする。現時点で,以下の結果を得ている。 1)6-hydroxydopamineの脳内局所(左側の内側前脳束)投与によりヘミ・パーキンソン病モデルラットを作成し,行動(メタンフェタミン誘起回転運動)および形態学的変化(tyrosine hydroxylase免疫染色によるドーパミン細胞および神経終末の消失)を観察し,ヘミ・パーキンソン病モデルとしての妥当性を評価した。更に,モデルラットの破壊側線条体に,ラット胎仔中脳由来のドーパミン細胞を移植し,移植後の行動(メタンフェタミン誘起回転運動の正常化)・形態学的変化(線条体移植部のドーパミン活性の回復)を経時的に観察した。2)メタンフェタミン腹腔内投与に,当該モデルラットの大脳基底核(線条体・淡蒼球外節・黒質網様層)において,FosおよびZif268は異なる様式で発現した。3)破壊側線条体への胎仔中脳細胞の移植により,メタンフェタミンによる線条体・淡蒼球外節におけるFos発現,線条体におけるZif268発現は正常化した。しかし,黒質網様層のFos発現および淡蒼球外節・黒質網様層のZif268発現に変化はみられなかった。4)L-DOPA単回投与(腹腔内)により,モデルラット破壊側線条体その他のドーパミン神経投射部位で,FosおよびZif268の過剰発現が認められた。この現象は,胎仔中脳細胞移植により正常化された。
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