研究課題
統台失調症や気分障害をはじめとする精神疾患は従来の診断基準では生物学的に異種性が強く、病因解析には対象の規定が極めて重要である。今回、精神症状に加えミトコンドリア機能異常を伴うと考えられるものを研究対象としてミトコンドリア遺伝子解析およびミトコンドリア遺伝子異常を引き起こす核性遺伝子変異の検索を行った。我々は、主症状として気分障害、統合失調症として加療されていたが、経過中にミトコンドリア異常が原因と考えられる筋力低下もしくは眼瞼下垂を呈したケースに遭遇した。前年度白血球由来ミトコンドリア遺伝子異常を検索し、統合失調症様の症状を前景とした症例からはHirataらの報告にあるCOIIとtRNA(Lys)遺伝子間領域のnp8291A>G変異とnp8272-8280の9bp欠失を認めた。同症例において筋由来のミトコンドリア遺伝子についてPCR-サザンブロット解析をおこなったところ、単一巨大欠失を認めた。また、経過中眼瞼下垂と気分障害をきたした2例については筋由来のミトコンドリア遺伝子の多重欠失を認めた。変異がミトコンドリア遺伝子異常を引き起こすと言われている核性遺伝子POLG1,POLG2,PEO1,.ANT1,ECGF1,WFS1について、直接シークエンシング、TaqMan probeをもちいたリアルタイムPCR法による名遺伝子のcopy number variation(CNV)の検索を行った。3症例ともこれら遺伝子中には病因となりうる変異やCNVは見出せなかった。今回核性遺伝子異常は見出せなかったが、気分障害や統合失調症症状を呈する精神疾患の中にはミトコンドリア異常が殖因となっているものが少なからず存在する可能性があることが示唆された。我々は遺伝性神経変性疾患における変性部位においてミトコンドリア遺伝子異常が引き起こされその障害によって神経変性に至るという仮説のもとに有棘赤血球舞踏病モデルマウスの脳線条体におけるミトコンドリア遺伝子異常の検索を行ったが欠失変異は認めなかった。
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