平成18年度において、当教室では中国人・統合失調症:約110家系と日本人・統合失調症:約40家系のDNAを保有している。これらの中国人家系と日本人家系には探索眼球運動検査が施行されている。また、中国人家系にはPANSS(陽性・陰性症状評価尺度)も施行してある。これらの対象を使い22q11上の有望な候補遺伝子であるZDHHC8を解析した(22q11は、統合失調症・疾患感受性染色体領域として最も注目されているエリアの一つである)。その結果、統合失調症とZDHHC8遺伝子は相関していなかった。しかし、統合失調症の中間表現型と考えられている探索眼球運動とZDHHC8遺伝子が相関していた。また、統合失調症とZDHHC8遺伝の相関は女性の方が顕著であることが報告されている。よって、上記の結果に加え、我々も性差を含めた検討を行った。その結果、従来の報告どおり、探索眼球運動とZDHHC8遺伝子の相関は女性統合失調症患者のいる家系において顕著にみられた。これにより、ZDHHC8遺伝子が統合失調症の病因と何らかのかたちで関わっている可能性が示唆された。 さらに、平成19年度において中国人・統合失調症:約50家系を追加収集できた。これらの対象にも探索眼球運動検査とPANSSが施行されている。よって、上記のZDHHC8遺伝子の結果に関して、さらに約50家系増やし、計約200家系で確認する予定である。また、他に6p、22q11、22q12-13上の14個の遺伝子も解析中である。これにより、本研究において、1)15個の遺伝子と統合失調症および、その中間表現型である探索眼球運動との相関、さらに、2)これらの遺伝子と統合失調症の症状や病型との関係を検討することができる。
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