この研究の目的は、統合失調症の疾患感受性遺伝子を検索することである。そのため、有力と思われる候補遺伝子と統合失調症の相関を検討する。これまでに、我々は統合失調症を対象にした連鎖解析や関連研究を施行し、22q11.21-q11.23が統合失調・感受性領域である可能性が高いことをみいだした。今回は、上記の領域内の遺伝子を中心に解析した。さらに、これらの遺伝子と、統合失調症の中間表現型と考えられる探索眼球運動異常との関係も調べた。 現在、当教室では統合失調症家系:205(中国人家系:163、日本人家系:42家系)のDNAを保管している。これらの中国人家系と日本人家系には探索眼球運動検査が施行されている。平成19および20年度で、これらの対象を使い、22q11上の有望な候補遺伝子:ARVCF、COMT、GNB1L、TBX1、ZDHHC8、DGCR2、8p12上の有望な候補遺伝子:NRG1のgenotypingが終了した。 ZDHHC8遺伝子に関しては統合失調症との相関解析も終了している。その結果、統合失調症とZDHHC8遺伝子は相関していなかった。しかし、統合失調症の中間表現型と考えられている探索眼球運動とZDHHC8遺伝子が相関していた。統合失調症とZDHHC8遺伝子の相関は女性の方が顕著であることが報告されている。よって、上記の結果に加え、我々も性差を含めた検討を行った。その結果、従来の報告どおり、探索眼球運動とZDHHC8遺伝子の相関は女性統合失調症患者のいる家系において顕著にみられた。これにより、ZDHHC8遺伝子が統合失調症の病因と何らかのかたちで関わっている可能性が示唆された。
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