研究概要 |
今回軽度認知障害(以下,MCI)やアルツハイマー型認知症(以下, AP)などの認知症患者に対して,探索眼球運動や脳波のトポグラフィー解析及び事象関連電位のLORETA解析と,従来行われてきた,MRIやSPECTなど脳統計画像解析による計測とを同時期に検査を行うことで,健常者とMCIや認知症の初期から脳の器質的変化と,脳の機能的変化との関連を比較検討することを目的とし,明らかな器質的変化が起こる以前に機能的変化が起こっていないか調べてきた。現在までに,赤ちゃんの「泣き』「笑い』「中性』表情写真や「〓」図を用いて事象関連電位のLORETA解析および探索眼球運動の計測を行ってきた。その結果,健常者に比較して,AD患者は有意に注視停留点総数の減少,総移動距離の短縮が認められ,反応探索スコアの減少が認められた。また事象関連電位のLORETA解析では,側頭、頭頂葉領域の活動性の低下が示唆された。 MCI患者においても,比較的早期より反応探索スコアの減少,LORETA解析における側頭、頭頂葉領域の活動性の低下を示唆する1群が認められた。脳統計画像解析では,松田らの監修によるMRIを用いた早期AD診断支援システムのVSRADでも,若年型AD患者で,明らかな海馬や海馬傍回の萎縮を認める以前に, PETやSPECT所見で,側頭頭頂部の血流低下が認められており,これら結果との関連も研究している。今後の予定として,さらに対象者を増やし,調査を行うとともに,MMSE, HDS-R, ADAS-cog, CDRなど各神経心理学的検査との関係を調べAD患者の早期診断の診断率の向上を図るとともに,コリンエステラーゼ阻害剤などによる抗認知症薬の治療効果についても研究を行っていく予定である。
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