研究課題
大分県宇佐市安心院町での認知症予防の取り組みは平成20年度で5年目を終了する。さらに平成21年度も続行されているが、長続きする創造的活動と評価されている。福岡大学は評価者であり、黒子であり、陰ながら住民の活動をサポートしている。当初は1250名の住民の中から64名が健忘性MCIとして抽出された。ランダムに18名が選出され、予防活動を行っていただいた。残りの46名はこれまでどおりの生活を遂行し、1年ごとに心理テストと脳血流SPECTによる評価を行った。予防活動は認知リハ、栄養改善、有酸素運動から構成され、午前9時から午後3時まで週に一日のペースで、ファシリテーターと運動指導員に見守られながら、二組に分かれて(火、金で9人ずつ)行われた。現在まで1名の脱落者はあったが、初期からの17名は活動を続けている。3年後(平成19年度)の評価では予防活動を実施しなかった群の中から20名が認知症に移行し、予防活動遂行群には認知症移行例はなく、18名中16名の記憶能力は正常化した。今年度(平成20年度)の研究は4年後の予防活動群での評価であり、心理テストで1名がアルツハイマー病(AD)に移行したことを確認した。他の参加者は3年目の評価とほぼ同様であった。脳血流SPECTでは初回時と1年後の評価に比べ、前頭葉の血流低下を認めた。しかしながらADに特徴的な側頭・頭頂葉や帯状回後部の血流低下は認められなかった。一方MCI状態で予防活動を行っていない10人の対照群では前頭葉の血流低下のほか、頭頂葉や帯状回後部の血流低下を認めた。以上の研究に追加して、高齢者での運動の効果をFDG-PETを用いて検討した。健常高齢者を対象にしたもので、運動には左海馬と右紡錘状回にブドウ糖代謝亢進作用があることがわかった。
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