メタ記憶とは自分が記憶している内容についての知識のことで、記憶のモニタリングの働きをしていると考えられているが、この機能は統合失調症で障害されているとされている。一方、統合失調症とドーパミンとの関連は疑いようのないことである。これらの事実から、メタ記憶がドーパミンと関連している可能性があるという仮説を立てた。そこで、本研究では、メタ記憶を司っている脳部位とドーパミンの関与について明らかにすることが目的であり、本年はヒトを対象として機能的MRI実験とPET実験を行った。PET実験は、被験者の対するばらつきを減らすために、当研究室が所有しているドーパミンのデータベースも用いることにした。また、当初はドーパミンとの関連のみを検討する予定であったが、セロトニンのデータベースも用いて、脳全体のシステムの中でのメタ記憶の位置づけを調べるように予定を拡張した。機能的MRIについては、ヒトは対象となるものに対してあらかじめ知識があると、左の前頭葉と側頭葉の前方が強く働き、あらかじめ知識がないと左の海馬と左の前頭葉の活動が盛んになることがわかった。このことは、対象に対してあらかじめ知識があるとメタ記憶が動員され、前頭葉からのトップダウンの信号が強くなることを示唆している。また、あらかじめ記憶がないと、一つ一つをエピソード記憶としてバラバラに扱い、メタ記憶が働きにくいことを示唆する。また、この結果からメタ記憶には前頭葉が重要な役割を果たしていることが示唆され、ドーパミンのメタ記憶への関与を示唆していると考えられる。
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