MRIが最新の3T(テスラ)超高磁場装置に更新されたために、これを用いての研究を開始するのが妥当と考え、3T-MRIでの最適撮像条件の設定をファントムスタディーにて決定することからやり直すこととした。目的とするAdamkiewicz動脈は細径で、静脈に近接しているために、高時間分解能にて動脈相、静脈相を分離した高分解能MRIスキャンを行う必要がある。MRIの特色である高時間分解能にてAdamkiewicz動脈と脊髄根静脈を別個に画像化できる条件を見つけるために細血管模擬ファントムを作成した。ファントムは、血管を模した細径チューブを配置し、その周囲をガドリニウム、食塩、寒天にてT1値、T2値を筋と等価に調整したゲルにて覆った。MRIの高時間分解能シークエンスであるKeyhole techniqueを用いて、さまざまな条件での高時間分解能スキャンを上記ファントムに対して行い、細径血管には40%以上のKeyhole factorが適当の結論を得た。ボランティアによる撮像にてAdamkiewicz動脈のKeyholeプロトコールでの画像化に成功した。 これにつき、国際学会にて発表した。 臨床例では、MDCTによる胸腹部大動脈瘤手術前評価を行なった。総説として発表した。 臨床のMRI装置が更新され、世界的にも最新の機器であり、3T-MRIを用いてのAdamkiewicz動脈描出の報告はないため、まず、撮像条件の設定から始めることが必要となった。基礎的な細径ファントムの作成に成功し、パラメータを変えながら撮像実験を繰り返すことで、高時間分解能での細血管画像化の条件を得た。今後は、本条件をボランティアに適用し、生体でのAdamkiewicz動脈-脊髄根静脈分離方法の確立を目指すが、その基礎データを得ることができた。
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