研究概要 |
単純CTは,未だに急性期脳梗塞の診断に最もよく用いられている検査である.単純CTは,汎用性と迅速性に優れているため,救急施設では第一選択の画像検査として用いられている.また,過去十年間,血栓溶解療法の普及に伴い,単純CTにおける急性期脳梗塞の早期虚血サインが大きく注目されてきた.早期虚血サインは,発症早期に淡い脳実質の低吸収域として現れ,血栓溶解療法の適用の判断に用いられる.しかし,わずかなCT値の変化として現れる低吸収域を検出することは困難であり,医師の読影経験と知識がその検出に影響すると言われている.したがって,急性期脳梗塞の診断では,CT画像における早期虚血サインの検出精度の向上が望まれている.早期虚血サインの検出精度を向上させる方法として,画像処理による早期虚血サインの描出能の改善が挙げられる.いままで我々は,ノイズ低減フィルタを開発し,CT画像に適用した結果,早期虚血サインの描出能を改善できる可能性を示した.本研究では,単純CT画像における急性期脳梗塞のコンピュータ支援診断(CAD)システムの開発を目的として,虚血による低吸収域の存在の有無を判定し,低吸収域の存在する位置を粗領域としてCT画像上で検出する一手法を提案した.異常26例,正常30例に本手法を適用し,しきい値を感度が最も高くなるように設定したとき,感度は約92%,1画像あたりの偽陽性数は0.16個となった.今後,パラメータの最適化などをさらに検討し,実用的なCADシステムの構築を目指す.
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