研究概要 |
シグマレセプターの分子機能は未だ完全には明らかになっていないが,種々の癌において高密度に発現おり,シグマレセプターの発現が癌の悪性度にも関与していることが報告されていることからシグマレセプターを体外から非侵襲的に画像化する薬剤の開発が切望されている。我々はこれまでに,ベサミコールのベンゼン環のパラ位にヨウ素を導入した(+)-p-iodovesamicol(pIV)がシグマレセプターに対して非常に高い親和性を持つことを見いだした。そこで本研究では,放射性ヨウ素標識pIVを作製するために前駆体である(+)-p-tributylstamylvesamicolを合成し,その後,放射性ヨウ素スズ交換反応により^<125>I標識を行うことにより,放射化学的収率87%,放射化学的純度99%以上で[^<125>I]pIVを得た。次いで,シグマレセプターが過剰発現していることが知られているDU-145ヒト前立腺癌細胞をヌードマウスの皮下に移植することにより担癌マウスを作製し,[^<125>]pIVの体内放射能分布を評価した。その結果,[^<125>I]pIVは,腫瘍へ高い放射能集積を示し,血液,筋肉への放射能集積は低値を示したため,非常に優れた腫瘍/血液,腫瘍/筋肉の放射能集積比を達成した。しかしながら,肝臓や腎臓などの腹部の非標的組織への放射能集積も高く,問題となった。今後,^<131>Iを用いた内用療法への応用を検討していく予定である。
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