研究概要 |
平成19年度は肝細胞癌のモデルの確立を行った。当初のモデルとして、マウスを使用し、100ppmのdiethyl-nitrosoamine(DEN)を飲水に混ずることによって化学発癌を試みたが、マウスは肝細胞癌誘導以前に肝障害で死亡する例が多く、動物モデルとしては不適当と判断し、使用する動物種をマウスからラットに変更した。 また、ラットの肝細胞癌の免疫組織化学染色の最適化を試みた。予備実験で少数例のラットを用いて、誘導された肝細胞癌に対して、種々と前処置やオーバーナイト染色(一次抗体)などを行って、至適抗体・染色条件を検索した。その結果、DAKO社製のCD31,CD34、factor VIII related antigen,thrombomodulin,VEGF,α smooth muscle actinのうち、CD31は全く交差反応が見られず、他の抗体はラット肝細胞癌の腫瘍血管を自動計測を可能にするほどのコントラストでは交差反応が得られなかった。 最適化にあたっては広範な情報収集も行ったが、ラット肝細胞癌における血管系の免疫組織化学染色に関して成功したという報告は見いだせなかった。従って、今回の実験においては、免疫組織化学染色の結果は参考情報ということになった。 並行して、動物実験を継続、5週齢の雄性F344ラット60匹に100ppmのDENを飲水に混ずることによって2ヶ月間化学発癌の誘導を行った。2ヶ月目に動物をGd-DTPA(0.1mmol/kg i.v.)による造影MRIを行い、肝硬変症は存在するが多血肝細胞癌は肝内に存在しない状態(血管誘導前の状態)にあることを確認した。ここでプロトコール通り、飲水からのDENの投与を中止し、残りの一か月間サリドマイドあるいは偽薬を飲水中に溶解して投与を開始した。
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