研究概要 |
平成19年度で明らかにした頭部CT画像のモニタ上の輝度レベルから脳実質内の軽微なdensityの差を標的とするファントム画像を作成した。256階調中の脳実質の平均的輝度レベル(75)を背景とする450×450ピクセルの方形画像を電子的に作成し,その領域を4分割したもののうちの1つに背景と入力値の異なる円形の標的を埋め込み,どこに標的が存在するか,モニタの違いで正答率に有意差が出るか,11名の読影者による読影実験を実施した。モニタはすべてカラーモニタで,ノートブックPC,1K高精細モニタ,汎用モニタ(GSDF),汎用モニタ(ガンマ2.2)を比較した。各モニタについて1,600画像を判定したところ,ノートブックPCの正答率が96.0%と最も正答率が高く,次いで汎用モニタ(GSDF)91.7%,汎用モニタ(ガンマ2.2)91.4%で,1K高精細モニタが83.0%と有意に低い正答率を示した(p<0.05)。また,応答時間の平均もノートブックPCが1,198msと最も早く,汎用モニタ(ガンマ2.2)が1,360ms,汎用モニタ(GSDF)1,499msで,1K高精細モニタが1,922msと有意に遅かった(p<0.05)。高精細か汎用モニタかの相違よりも,階調特性がガンマ2.2か,GSDFかの相違が,正答率,応答時間に影響することが示唆された。また,疲労度の客観的指標として酸素飽和度の連続測定を行ったが,読影実験の前後の酸素飽和度でモニタ間の有意差は認めなかった。頭部CTの読影では,高精細モニタよりもむしろ汎用モニタの方が病変を識別しやすい可能性が示された。電子カルテシステムの汎用モニタを用いて頭部CTを読影することが原因となって誤診が増えるとはいえないことが示唆されたことは,電子カルテシステムのコストを削減することにつながる点で臨床的意義がある。
|