研究概要 |
医療の進歩などによる平均寿命の延びに伴い発症率は増加しており、日本ではアルツハイマー病の患者数は約130万人と推計されている。アルツハイマー病の原因は不明であるが、患者の脳では、同年代の脳と比較して多くの神経細胞が死滅し、大脳皮質の萎縮または側脳室の拡大が起こる。そして、初期段階では、萎縮は海馬や嗅内野で起こり、そのような重要部位で脳血流が低下すると言われている。しかし、初期段階の程度を客観的に評価することは医師にとって非常に難しく、時間のかかる作業である。本研究では、アルツハイマー病の早期診断を目的とし、T1、T2強調MRI画像から得られる形態情報(皮質の厚み、脳脊髄液、海馬、嗅内野の領域情報)とMRIのperfusion画像から得られる機能情報(脳血流量)に基づいて、アルツハイマー病の可能性を定量的に評価する診断支援システムを開発することを目的としている。本研究の結果,次の結果を得た.(1)非造影MR撮像法であるArterial spin labeling(ASL)による,脳血流量(CBF)に基づいてアルツハイマー病(AD)の支援診断システムを開発した.提案手法では,Talairachの標準脳図譜をCBFマップにレジストレーションすることによって,皮質の平均CBFを抽出した.そして,人工ニューラルネットワークに基づき,ADの鑑別を行った.CBFマップはAD自動鑑別に役に立つ可能性を示した.(2)ファジーCクラスタリング法に基づき3次元TIMR画像において皮質と白質の領域分割方法を開発した.脳モデルマッチングに基づいて脳実質領域を抽出し,ファジーCクラスタリング法を用いて皮質と白質の領域を抽出した.その結果,ADと非AD患者を良好に判別できる可能性を示した.
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