研究概要 |
Gd造影剤を用いた脳血流量計測(動的磁化率コントラスト法;DSC法)では、虚血部位において動脈入力関数が正しく推定されたとしても、CBF値を過大評価してしまう可能性があることを我々は報告してきた。この原因としてDSC法における信号値から造影剤濃度に変換する比例定数が虚血領域で異なるのではないかと考え、研究を進めている。 本年度は,まず、血管径変化を磁性球体の大きさの変化に変換してコンピュータシミュレーションをおこなう手法により、異なる径の血管が含まれる状態での比例定数の算出方法を検討した。それぞれの血管が均等に増加したと考えたとき信号強度がどの程度変化するかを調べたところ、血管径が2倍になったとき,見かけ上の信号変化量が1.5倍程度に増加する結果が得られた。これは、血管径の増大によって造影剤濃度比例定数が増加することを示す。つまり、血管径増大により比例定数が増加し、虚血領域で脳血流量の過大評価が生じることが説明できた。 動物実験においては、DSC法にたいする標準測定法として検討を進めている持続的スピンラベル法(CASL法)の測定精度を検討した。虚血領域における縦緩和時間を測定した結果、モデルラットの虚血領域では縦緩和時間が10%程度増加していることを確認した。従来のCASL法では虚血領域と正常組織の縦緩和時間を同値としており、誤差を生じる要因となる。また、60分虚血の過渡的MCAOモデル動物において虚血後1〜2日後に観察される高灌流異常において、血流量推定値がCASL法とDSC法で異なるかどうかを検討した。DSC法、CASL法のいずれの手法でも高灌流異常が観察され、虚血後2日後に観察された高灌流異常は測定法上の問題ではなく、生理学的な変化であることが確認された。
|