「研究の目的」日本人を含めたアジア人に対するZenith stent graft有用性や問題点は殆ど報告されていない。本研究の目的はステントグラフトを留置した腹部大動脈瘤患者を対象に、解剖学的特徴、エンドリークの有無、瘤径の推移との関連性を追跡調査し、ステントグラフト留置術の適応を明らかにすることである。 「対象と方法」腹部大動脈瘤例を対象に、CTの計測結果をもとに、ステントグラフトを設計し、両側ソケイ部を切開した後、Zenith stent graftを留置した。瘤内に予めカテーテルを留置し、ステントグラフトの留置直後、バルーンカテーテルによるステントグラフトの圧着後に瘤内圧と大動脈圧較差の変動を観察した。ステントグラフト留置術後に単純写真、CTで経過観察し、瘤径の推移、エンドリークの有無を検討した。 「結果」解剖学的検討では米国での臨床治験データーと比較して、本邦の腹部大動脈瘤では総腸骨動脈の長さが短く、留置術においてlanding zoneが外腸骨動脈に及ぶことが多い傾向にあった。瘤内圧と大動脈圧較差の変動は、プロキシマルネック、イリアックジャンクション、ディスタルネックでのバルーンによる圧着により、順次低下する傾向にあり、特にイリアックジャンクションでのバルーンによる圧着が瘤のシーリングに関与する可能性が示唆された。ステントグラフト留置術後の経過は良好な症例が多いが、課題として腸骨動脈の短い例あるいは拡張例で腸骨動脈レッグの移動によるエンドリークやエンドテンションによる瘤径の拡大あるいは不変がみられることである。 平成20年度は解剖学的特徴と術後経過をより詳細に検討して、瘤径推移に関する困子を明らかにするとともに、ステントグラフト留置術の適応拡大を目的とした穴付きステントグラフトを設計・留置し、その初期成績を評価する予定である。
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