本研究は、FDGに代表される種々の18F-標識薬剤を合成する上で重要な出発原料(ターゲット)である18O-濃縮水を再利用するため、PIXE(粒子線励起X線放出)分析法に基づく信頼性の高い品質管理法を確立し、これを多くのPET施設に提供することを目的とする。また、蒸留法に代わる回収ターゲット水の再生を目的とした簡便精製法(カートリッジ式精製法)の開発を試みた。実施にあたっては、最初に測定精度、再現性の高いPIXEターゲット試料の作成方法を検討し、本研究に対応できるようPIXE分析条件を最適化した。 測定試料の調製は、内部標準として金属標準液を5-10ppmになるように加え、50μLをポリプロピレン薄膜に滴下、乾燥しPIXEターゲット試料とした。複数のPET施設から提供された未使用の18O-濃縮水、回収ターゲット水および再生水を対象とし、残留不純物(元素)の定量を行った。得られた結果を以下に示す。(1)20種以上の元素が検出されたが、極微量(0.01μg/mL以下)の測定は再現性に問題がある。(2)回収水の混入元素は施設間で若干の違いがあるが、塩素、ケイ素、カリウム、ナトリウム、イオウ、カルシウムが比較的多量に含んでいた。ターゲット容器素材であるチタンも検出された。(3)蒸留精製により回収水中の混入元素が効果的に除去されているが、カリウム、ナトリウムなどの低元素類の残留が確認された。(4)いずれの試料からも明らかなフッ素の存在が認められなかった。(5)各種カートリッジを組合せることによって、金属添加試料に対して良好な金属元素の排除効果を確認できた。 以上の結果より、PIXE分析法が18O-濃縮水の品質管理において実用的な方法になりうる可能性を得た。今後はPIXE分析の結果が真にターゲット水の清浄度を反映し品質管理法として利用できるのか、他の不純物との関連を調べ、総合的に評価する。
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