研究概要 |
1,非侵襲的画像診断法の一つであるマルチスライスCTを用いた心臓弁膜、特に大動脈弁の適切な描出方法や評価方法を昨年度の研究で明らかにしたが、本年度はその研究結果を元として、心臓弁膜疾患を有する臨床例に対して応用し、その診断精度を明らかにした。 2.対象は、2005年9月から2006年11月の間に本学で大動脈弁狭窄症の診断で心臓CTを撮影した後に手術を行った50例(男性23例、女性27例)で、後ろ向きに検討を行った。これらの症例のCT画像のデータを、今回の我々の研究で求めた方法を用いて大動脈弁の画像を改めて再構成し、二尖弁と三尖弁の鑑別がどの程度可能かを、手術所見をゴールドスタンダードとして評価した。具体的には、収縮期と拡張期の2つの心位相で、MPR (multiplanar reforma-tion)画像とVE (virtual endoscopy)画像の2種類の三次元画像、合計4枚の画像で診断を行った。使用したCT装置は東芝製64列マルチスライスCT (アクイリオン64)を用いた。なお、CTの診断能を客観的に比較する目的でCTとほぼ同時期に施行してあった経胸壁心エコー法(TTE)の検査結果とも、カルテ所見をベースとして比較した。 3.手術では17例に二尖弁が認められた(有病率34%)。CTの診断能は、感度94%、特異度100%、陽性的中率100%、陰性的中率97%であった。それに対してTTEの結果はそれぞれ、77%、61%、68%と95%であった。CTとTTEとの正診率には統計学的な有意差が認められた。 4.少数例ではあるが最新鋭の320列マルチスライスCTでも大動脈弁の評価を行い、その初期経験を報告した。
|