【目的】核医学検査は生理的な臓器の状態を画像化できる検査として知られている。一方で、CTやMRIなどの検査方法に比べて空間分解能が低く、微小病変を十分に検出できないという課題がある。近年、高い空間分解能が期待される半導体検出器が開発されており、今後、画像診断における核医学検査の位置付けを大きく変える可能性が期待される。そこで、本研究ではテルル化カドミウム半導体を用いたガンマカメラシステムを用い、実際の臨床例での心疾患に対する適応を評価することを研究目的とする。 【方法】半導体ガンマカメラの空間分解能をロッドファントムにより測定し、基本性能を評価した。さらに4ミリ厚の欠損により非貫壁性梗塞を模擬した心筋ファントムを用い、その描出能を従来ガンマカメラと比較した。臨床画像の取得のため、SPECTデータ取得のための回転式椅子を製作し、健常ボランティアによる適切な撮像条件の検証を行い、収集プログラムを決定した。臨床例の評価として、心筋梗塞症例を対象にSPECT画像の取得を行った。 【結果】心筋ファントムによる仮想非貫壁性梗塞部の描出では、従来ガンマカメラでは全層性の集積低下となったが、半導体ガンマカメラでは欠損モデル部に局限した集積欠損として捉えることができた。また心疾患での臨床例においては、従来ガンマカメラでは集積欠損となっていた梗塞部も半導体ガンマカメラでは心筋描出が明瞭であった。さらに微小病変での描出能比較では、従来ガンマカメラでは全層の欠損として描出された非貫壁性梗塞例も、半導体ガンマカメラでは内膜側でより強い低集積として確認された。 【結語】半導体ガンマカメラの高い空間分解能が臨床例でも活かされ、急性心筋梗塞症例などでのより正確な病変部描出が期待されることを確認した。
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