研究概要 |
近年の分子細胞生物学,分子遺伝学の研究の進歩に伴い,分子レベルでのがん治療(分子標的治療など)が展開されつつある。多くの分子標的治療薬が開発され,幾つかの化合物は臨床試験に進み、すでに一部の薬剤においては有効性を示唆する結果が得られつつある。一方、テーラーメイド医療を目指して、これらの分子レベルでの癌治療効果の予測を適正に評価できる方法の開発が現在、活発に行われている。放射性薬剤を用いた核医学診断法は、癌に発現した標的分子を画像化し、癌の早期発見、特性診断を可能にする方法であり、また、標的分子の動態を画像化することから癌治療効果を予測することも可能であり、テーラーメイド医療を実現する有力な手法の一つと考えられる。従って、本法による癌の早期診断ならびに分子標的治療薬の適正使用には、本法に使用される新規放射性薬剤の開発が必要不可欠である。 今年度の研究では、シグナル伝達を指標とする癌の早期診断と抗癌剤の薬効評価可能な新規分子イメージング用放射性プローブの開発を目的に新規アントラニル酸誘導体の合成と標識化合物の合成を行った。 新規誘導体として、ヨウ素導入部位の異なる3種の誘導体をドラッグデザインした。これら誘導体は、数段階の反応を経て、収率よく合成することができた。また、放射性ヨウ素標識誘導体の合成は、それぞれに対応する前駆体トリブチルスズ体を合成し、ヨウ素-スズ交換反応によって行った。放射性ヨウ素標識誘導体は、短時間かつ高収率で高放射能体を得ることができた。今後これら標識誘導体の放射性分子イメージング薬剤としての評価を行う予定である。
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