核医学診断法は、テーラーメイド医療を実現可能とする方法の一つである。しかしながら、核医学診断に用いるプローブの開発は不十分であり、その開発が期待される。本研究では、VEGF受容体チロシンキナーゼ(VEGFR-TK)活性診断可能な癌診断用薬剤の開発を計画し、アントラニル酸骨格を有するVEGFR-TK阻害剤であるAAL-993をリード化合物として、新規誘導体をドラッグデザインし、合成した。新規誘導体のVEGFR-TK活性を測定した結果、VEGFR-TKに対する高い阻害活性を有することが確認された。続いて、新規誘導体に対応するトリブチルスズを有する前駆体を合成し、有機スズ-ヨウ素交換反応により、放射性ヨウ素標識体を得ることができた。 次に、新規誘導体の癌画像診断薬としての有用性を調べた。新規誘導体を用いて、生体内での安定性、ddY雄性マウスによる体内動態の検討を行った。さらに、VEGFR-TK発現性癌であるPC-3癌細胞を移植した担癌モデルマウスによる癌集積性を調べた。以上3つの観点から、新規誘導体を比較した結果、p-Iodophenylmethyl-2-[N-(4-methyl)pyridinyl]antranilate([^<125>I]p-NPAM)に癌診断薬の可能性が見出された。[^<125>I]p-NPAMの癌集積は、阻害剤前投与実験より、VEGFR-TKに選択的な結合を介したものと考えられた。また、PC-3担癌モデルマウスを用いて[^<125>I]p-NPAMのSPECT/CT画像を撮影した結果、VEGFR-TK活性を反映した明瞭な癌の画像を描出できた。 以上より、[^<125>I]p-NPAMのVEGFR-TKを標的とする癌診断用放射性分子イメージング薬剤の有用性が見出され、癌の早期診断ならび特性診断が可能と考えられた。また、本標識薬剤を用いたテーラーメイド医療への展開が期待された。
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