Bcl-2ファミリータンパク質はミトコンドリアを介したアポトーシスの決定因子として知られる。一方、脳卒中急性期においてペナンブラと呼ばれる梗塞周辺領域ではアポトーシスによる細胞死が多く見られ、生存する細胞群ではBcl-2ファミリータンパク質の中でアポトーシスを抑制するタンパク質BcL-2やBcL-xLが増加するという報告もある。BcL-xLに特異的に結合する低分子化合物BH3I-2'の4つの類似化合物(化合物FBH1-4)の^<18>F標識合成を行い、BcL-xLのin vivoイメージングを試みた。これらの4化合物はサイクロトロンで製造したポジトロン放出核種^<18>Fでラベルされたフッ素アニオンをTBAHCO_3を用いて活性化し、それぞれの前駆化合物(ベンゼン環トリメチルアンモニウム塩)への求核置換反応を用いて標識合成できた。脳卒中モデルラットを用いてその分布を調べた結果、脳への取り込み量は[^<18>F]FBH1<<[^<18>F]FBH3<[^<18>F]FBH2<[^<18>F]FBH4であり、[^<18>F]FBH1は脳のイメージングには不向きであった。また[^<18>F]FBH3は中大脳動脈梗塞モデルラットでは梗塞周辺に高い集積部位が認められ、免疫化学染色によるBcl-2の高発現部位と一致した。この結果からBcl-xLの増加すなわちアポトーシスに抵抗する細胞の画像化の可能性が示唆された。さらに[^<18>F]FBH3の病態における挙動について研究を進めることにより新しい脳卒中の質的診断法に発展することが期待される。
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