1. 腹臥位での放射線治療に関する研究:前年度までに、乳房温存術後加速乳房部分照射(APBI)の仮想治療計画を行ったが、小さな乳房はもとより比較的大きな乳房患者においても標的臓器や正常組織の線量分布は納得できるものではなかった。そこで、腹臥位でAPBIの可能性が広がるのではないかと考えた。しかし固定精度は従来の背臥位と比べると充分なものではなかった。これを改善するために、腹臥位での全乳房照射患者において放射線治療時の固定精度を検証した。その結果、腹臥位では背臥位での固定精度に比し不良であることが示されたが、固定の方法と体位保持のための工夫により改善する可能性を示唆する結果であった。 2. CT-simulation画像データを用いたAPBI治療計画:昨年度までに腹臥位で全乳房照射の治療計画を行った患者において、CT-simulation画像データをもとに仮想の治療計画を行ってきた。まずはNSABP B39/RTOG O413のプロトコールに従って治療計画を行い、標的臓器や正常組織の線量分布がプロトコールに示されている線量制約を遵守できているかどうかを検証した。また、遵守の可否にかかわるパラメーターについて検討し、どのパターンでプロトコール通りの治療計画が可能であるかを求めた。その結果、腹臥位で照射することにより線量制約の遵守が容易となる症例が存在することが判明した。 3. 腹臥位専用患者支持マットの改良:昨年度・一昨年度、腹臥位での照射専用の患者支持マットを作成/購入した。現在これを使用して腹臥位全乳房照射の治療計画から実際の治療までを行っている。しかし、固定制度の面からは、まだ形状や材質は完成された物ではなかったため、改良を加えた。その結果、患者が快適に腹臥位照射を受けることができ、固定精度も改善する傾向が認められた。この経験は、日本人体型に適した支持マットの作成に貢献するものと考える。
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