研究概要 |
本研究では,高精度放射線治療の線量検証及び日常の治療線量の精度管理(品質管理・品質保証)のために,水等価固体ファントムに対する物理データ(質量衝突阻止能比,質量エネルギー吸収係数比等)をモンテカルロ(MC)計算から算出し,水等価固体ファントムを用いた吸収線量測定法を確立する.本年度は高エネルギー電子線についての研究成果を報告する. 高エネルギー電子線における水と固体ファントムの電離量変換係数h_<pl>の評価 国内で使用されている4種類の固体ファントム(Solid water RMI457, Tough water WE211,Plastic Water, Plastic Water DT)について,次の研究手順で深さスケーリング係数c_<pl>とh_<pl>をMC計算及び測定から評価した. 1.リニアック治療装置の電子線照射ヘッドのモンテカルロ(MC)シミュレーション 照射ヘッドの幾何学的構造と材質等のMCシミュレーションにおけるモデリングについて,4,6,9,12,15,18MeVの電子線エネルギーを対象に測定ビームデータとの比較を通して行った. 2.固体ファントムのスケーリング係数c_<pl>の評価 各固体ファントムの校正深は,各電子線エネルギーについて水ファントムに対する各固体ファントムのc_<pl>から求めた.c_<pl>は各固体ファントムの化学組成とその重量比及び物理的密度(g/cm^3)をもとに, MC法で計算した種々の物理データから算出し,測定によるc_<pl>と比較した. MC法と測定によるc_<pl>値は,1%以内で一致することが確認できた. 3.固体ファントムから水ファントムへの電離量変換係数h_<pl>の算出と評価 校正深におけるh_<pl>は代表的な平行平板形電離箱についてMC法で算出し,測定値と比較した. MC法によるh_<pl>値は,測定値と1%以内で一致することが検証できた. 平成19年度の高エネルギー光子線における研究成果と合わせて,放射線治療における水等価固体ファントムを用いた光子・電子線の水吸収線量測定法を確立した.
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