研究課題
動脈瘤壁内では早期よりelastinや細胞成分が消失していることが知られ、力学的強度の高いcollagen (typeI)が壁の力学特性を規定していると考えられてきた。しかし、正常状態ではelastinの1000倍以上の強度を持つcollagenが主たる成分になっても、本来なら多少の張力に対し変化がないはずの血管壁に変化が起こるためには、collagenが力学的特性を発揮できないような不完全な分布または構造をとっていることは容易に想像される。本年度は、動脈瘤壁と比較するため、まずは動脈瘤化していない大動脈についてcollagenの種類、分布、走行性を測定した。具体的には動脈病変以外で死亡した剖検例を用いて若年(40歳以下)、中年(40から60歳)、老年(60歳以上)各5例ずつ検討した。動脈瘤のcollagenの含有量は原則として抗原抗体反応に基づくcollagen detection systemを用い、type IおよびtypeIIIの分布を検討した。また、走査型電子顕微鏡、偏光顕微鏡によりコラーゲン線維側の構造を解析し、FFT、 retadationを測定した。コラーゲンは中膜、外膜の一部にtypeIIIコラーゲンが確認されたが、年齢部位で明らかな差異を認めなかった。走査型電子顕微鏡では、瘤化していない大動脈の中膜ではコラーゲン線維がシート構造しており外膜ではしめ縄状構造をすることにより強度を保っていた。これは部位や年齢において本質的に変化はなかった。しかし、偏光顕微鏡で線維束を細かく調べてみると、波状構造は加齢とともに平坦化し、線維側は加齢により細く密となっていた。FFTでみてみると線維の方向性は部位や加齢により大きな変化はなく、コラーゲン線維の全体としての均一性を評価するretardationでは上行大動脈では低値(均一)で腹部大動脈では高値であった。以上、加齢により幾つかの線維構造が変化していることが明らかとなった。
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